車に乗っているとタイヤ交換は避けては通れないもの。路面と常に設置しているタイヤは普通に走っているだけでどんどん摩耗しています。
摩耗してしまったタイヤを使用していると雨の時にスリップしたり、急にバースト(パンク)してしまったり、と思わぬ事故につながる可能性もあり非常に危険。タイヤは適正な状態を保っていなければいけません。
一般的にはスリップサインが見えたら交換が必要と言われます。スリップサインはタイヤの残り溝が1.6mmになったことを表すための合図です。
スリップサインも交換時期の目安を決めるものですが、実は法定基準で使用して良い残り溝の深さが残り溝1.6mm決められています。タイヤは一般的に5,000km走行で1mm減ると言われているため、タイヤのギリギリの寿命は走行距離で言えば32,000kmと言えるでしょう。
この記事ではタイヤの寿命、交換時期について、またタイヤ交換を安く済ませる方法についてご紹介します。
タイヤの寿命の目安は4年〜5年
車には様々な消耗部品が付いていますが、タイヤは安全にも関わる重要な部品です。住んでいる地域によって夏タイヤと冬タイヤのタイヤ交換をしている方は多いかもしれませんが、タイヤのゴム自体が摩耗するためタイヤ自体を交換することも必要です。
タイヤはゴムで出来ているため走っている距離、使用した期間によって消耗するものです。
タイヤは5,000km走行で1mm減る
一般的なラジアルタイヤ(夏タイヤ)は5,000km走行すると溝が1mm減ると言われています。もちろん、タイヤや車体の種類、天候、走る頻度などによっても異なるためあくまで目安としての数字です。
新品のタイヤは約8mmの溝がある状態で作られているので、総合すると4万キロの走行が可能。ロングライフを売りにしたタイヤもありますが、極端に2倍以上使えるようなタイヤではないため、ちゃんと残り溝を確認して使用しなければいけません。
夏の暑い日に長距離を走ったり、駐車のたびに止まった状態でハンドルを切ったり、重たい荷物を乗せて長時間使用したりするとタイヤが摩耗しやすくなります。使い方によってタイヤが減るスピードも違うため、長距離使用をする方は1ヶ月に1回くらいはタイヤを点検してもらうと良いでしょう。
下でも書いている通り、保安基準としての残り溝は1.6mm。タイヤが5,000kmで1mm減るとすると、新品状態から32,000km走行するとタイヤの残り溝が1.6mmになって交換タイミングです。
と言っても、これもあくまでも目安なのでちゃんと目視点検しましょう。
タイヤの寿命は4年〜5年が目安
タイヤは走行距離だけではなく、年数が経過することによっても劣化します。タイヤはゴムで出来ているものなので、経年劣化してしまうのです。
走行距離を計算すると4年で溝が無くなる
タイヤの寿命は4年〜5年が目安となります。多くの方は1年に1万km走行する場合が多く、これは中古車買取業界でもある程度の基準とされています。10年落ちの車はだいたい10万km走っているのが一般的です。
タイヤの摩耗は5,000kmで1mmが目安になるので、仮に新品から4年経っているとすると
4年=40,000km走行×1mm×2(5,000kmで1mm減るので10,000kmで2mm)=8mm
となり、4年間に40,000km走行していると仮定して8mm摩耗します。新品のタイヤは約8mmの溝があるため、計算通りに4年間で40,000km走行していると溝が完全になくなってしまう計算になります。実際にはここまで計算通りに摩耗しないのですが、目安としてはこれくらい。
経年劣化によるヒビ割れ
タイヤはご存知の通りゴム製の部品であるため経年劣化で固くなってしまいます。さらにタイヤは常に地面と接しながら車体を支えているため、放っておいても非常に負担がかかっている箇所です。
タイヤは経年劣化することによってヒビ割れていきます。タイヤの側面に線が入ってヒビ割れているのを見たことはないでしょうか?ヒビ割れているとすぐにパンクするというようなことはありませんが、劣化していることには違いないので気をつけなければいけません。
基本的にヒビ割れているのはタイヤの表面だけなので、ヒビ割れを見つけたからすぐにタイヤを交換しなければいけないということはありません。ヒビ割れがタイヤ内部の骨格部分まで到達していなければ走行に対しての影響はありません。
しかしタイヤのヒビ割れはタイヤ側面(サイドウォール)でしか確認できません。自動車タイヤの調査、研究を行っているJATMA(一般社団法人日本自動車タイヤ協会)では車に安全に乗るための点検項目も記載されているので参考にしてみましょう。
タイヤの劣化がなくても、製造から10年が使用限度
通常通り使用されていると4年〜5年で溝がなくなりますが、走行距離が少ない場合は4年程度では溝が減らないかもしれません。しかし、上でも述べているようにタイヤは走っていなくても劣化します。
タイヤはパンクや大きなヒビ割れがなくても製造から10年経った場合には交換が推奨されています。目にみえる劣化はないとしても、ゴム自体が経年劣化するため急なトラブルが起きるかもしれません。安全に走行するためにも、タイヤの見た目に大きな劣化がなくても製造から10年経過したものは交換しましょう。
タイヤの製造年月を調べる方法
タイヤの側面にアルファベットと4桁の数字が書かれている場所があります。これがタイヤの製造年月を表しているので、確認してみましょう。
上の写真の場合、アルファベットの後の最初の2桁が製造された週を表しています。この場合は第15週に作られているので、4月に作られていると分かります。この2桁は月ではなく週で表されているので注意が必要。
さらに、その後に記載されている2桁がタイヤが製造された年を表しています。この場合は23と記載されているため、2023年に作られていると分かります。ここに関しては西暦で表されています。
つまり、上の写真のタイヤは2023年の4月(第15週)に作られたタイヤであることが分かります。この製造年月が現在から10年以上前になっている場合、タイヤは交換しましょう。
タイヤの交換サインは残り溝1.6mmのスリップサイン
タイヤの残り溝については道路運送車両の保安基準によって「いずれの部分においても1.6mm以上」あるようにと定められています。これは道路を走行するために定められているものなので、残り溝が1.6mm以下になった部分が1箇所でもあれば道路を走ってはいけません。
溝が1.6mm以下の状態だと道路交通法違反
「タイヤが減っていると滑りやすくなるので危ない」というだけではなく、残り溝が1.6mmよりも少なくなってしまうと車検には通りません。整備不良という扱いになるため、警察に声をかけられる可能性もあります。(走っている時にはタイヤ状態は分かりませんが、コンビニやスーパーで声をかけられることはあるようです)
残り溝が1.6mm未満になっていると整備不良で道路交通法違反となるため、普通自動車なら違反点数2点と、9,000円の反則金が科せられます。タイヤの溝が減ってるだけと軽く考えている方もいるかもしれませんが、歴とした違反行為なので反則金の対象です。
車に詳しくないと残り溝1.6mmと言われてもピンときませんよね。いつも定規を持ってタイヤの溝を測るわけにもいきません。タイヤが摩耗しているかどうか、残り溝が1.6mm残っているかどうかはタイヤのスリップサインによって確認できます。
スリップサインの確認方法
タイヤの残り溝を確認できるスリップサインというのは全てのタイヤについているマークです。タイヤによってスリップサインの数は違うのですが、ほとんどのタイヤに4箇所〜9箇所のスリップサインが付いています。
タイヤの側面を確認すると、写真のように三角マークが付いている場所があります。タイヤ側面に記載されているマークなので、いつも通り車を止めたまま横から見れば確認できるでしょう。
この△マークの延長上のトレッド面(タイヤの接地面)にスリップサインがあります。この△マークはあくまでも「ここの延長線上にスリップサインがありますよ」というマークなだけで、これがスリップサインではないので注意。
この、溝の中に見えるブロックのような(山のような)ものがスリップサインです。この写真使用済みのタイヤなのでスリップサインが見えてきていますが、新品のタイヤだと周りの溝が深いためスリップサインはもっと見えにくいでしょう。
スリップサインはタイヤの溝の中に作られている山です。なので、タイヤが摩耗してすり減ってきてもスリップサイン自体は削れません。周りのタイヤトレッド面(接地面)がすり減ってきてタイヤが薄くなってくると、トレッド面とスリップサインの高さがだんだん揃ってきます。
スリップサインがトレッド面と同じくらいの高さになると、「スリップサインが出てる」状態になり、タイヤの残り溝が1.6mmになっていることを指します。つまり、スリップサイン見えて周囲と同じ高さになってしまうとタイヤの交換期限ということです。
この写真のタイヤはスリップサインが見えて、周りのトレッド面と一体化してしまっていますね。本来は他にも溝があったのでしょうが、全体がツルツルにすり減ってしまっています。ここまですり減ってしまうと残り溝が完全に1.6mm以下になっているため危険。
これくらいになっている車を見かけることがありますが、雨が降ったりマンホールやグレーチングの上を走った時にスリップする可能性があります。また、道路交通法的に整備不良にあたるためタイヤ交換は必須です。
残り3mm程度でもスリップする可能性が高くなる
保安基準的には残り溝が1.6mmになったら交換が必要となっていますが、あくまでもこれは残り溝の下限です。1.6mmになる前に交換しなければいけません。
タイヤの溝は残り3mmくらいでもスリップしやすくなります。雨の日や高速走行ではグリップ力が弱くなることが原因で制動距離が著しく伸びてしまいます。
急ブレーキが効かなくなるだけではなく、ハイドロプレーニング現象と言って水の膜の上をタイヤが滑ってしまうような現象も起きます。ハイドロプレーニング現象になるとハンドル操作も効かなくなるため、高速で壁に突っ込んでしまったりと大事故に繋がります。
タイヤの溝は1.6mmギリギリまで使用せず、安全面を考えると残り3mm〜4mmくらいで早めの交換が安心です。4mm以下になるとタイヤの性能が下がると言われているため、定期的に点検を行い、気づいたときには早めに交換しましょう。
タイヤが摩耗すると起きること
タイヤが摩耗すると様々な現象が起きてきます。パッと見では分からなかったり、たまにしか車に乗らない人だと気付かない可能性もあるので、定期的な点検が重要です。
タイヤは車の全荷重を支えて地面と設置している部品です。1トン以上の重たい車体を支えながら高速で回転し、地面と常に設置しています。もし高速道路を走行していてタイヤが急にパンクしてしまったらと考えるとゾッとしますね。
そういったトラブルにならないためにも、タイヤが摩耗していないか気を付けて運転しましょう。
ヒビ割れ
タイヤが摩耗、劣化すると表面にヒビ割れが生じます。表面と言っても一般的にはタイヤ側面のサイドウォールにヒビ割れが起きるため、ヒビ割れに気づく人は多いでしょうが「タイヤの溝の場所じゃないから地面には当たらないし大丈夫かな。」と放置してしまう人が多いのも事実。
しかし、タイヤのヒビ割れが深くなり内部にまで達してしまうとその箇所からタイヤが裂けていきます。タイヤは内部に高圧の空気をパンパンに入れて形を保っているもの。もし少しでもタイヤが裂けてしまうとタイヤが破裂してしまいます。
タイヤ側面の変形(膨らみ)
古くなったタイヤの中には、側面(サイドウォール)がぷくっと膨らんでいるものがあります。これは、タイヤの中のワイヤーが損傷している、もしくは切れている場合に起きる膨らみです。
タイヤはゴムだけで出来ているのではなく、ゴムの中にワイヤーを入れることによって強度を上げるよう作られています、つまり、中のワイヤーが切れてしまうとそれだけでタイヤの強度がガクッと下がるということ。
なので、側面にぷくっとした膨らみが見えるような変形したタイヤはすぐに交換しましょう。そのまま走っていると、その膨らみが破裂してバーストする可能性もあります。
ロードノイズが大きくなる
タイヤのトレッド面(地面と接する溝の部分)が摩耗して減ってくると、ロードノイズがひどくなります。ロードノイズとは車が走っている時のゴーというタイヤの音です。
タイヤは厚いゴムで出来ているため、新品の時には地面との摩擦で生じる音を軽減してくれます。良いタイヤほどロードノイズを防ぐような工夫がされており静かに走行できるものです。しかしタイヤ表面が摩耗するとゴム部分が薄くなってくるため、地面の音をそのまま拾ってしまいます。
また、ロードノイズだけではなくブレーキの効きが悪くなる場合もあります。これも溝が減ってしまうことによって地面との摩擦がなくなり、ブレーキでタイヤを止めても少しだけ滑ってしまうのです。
突然のバースト
タイヤの劣化がひどくなると、タイヤが急に破裂することがあります。主な原因はタイヤの劣化によるヒビ割れであり、車重や速度に耐えられずに破裂してしまうのです。
停車している状態ではバーストとは呼ばず(ただのパンクとして処理されます)、走行しているときに急にタイヤが破裂することをバーストと呼びます。バーストすると破裂したタイヤ自体が外れることもあり、大変危険。
タイヤが外れることによって車の制御が効かなくなることもありますし、走行している他の車を巻き込む大事故につながる可能性もあります。劣化したタイヤを使用していると、自分の車だけではなくその他大勢の車を巻き込んだ大事故に発展する可能性があるため、ちゃんと点検して正常な状態に交換しておきましょう。
タイヤの寿命を伸ばすためのメンテナンス
タイヤを適正に使用できる寿命は製造から4年〜5年、もしくは32,000km走行が目安となります。厳密に使用期限が定められているわけではありませんが、製造から10年を経過したタイヤは使用しない方が安全でしょう。命を預ける重要な部品なので、早めの交換が重要です。
と言っても、タイヤは1本数万円を超える高価な部品です。そうコロコロと交換することも出来ません。高価なものだからこそ、できれば長く使用したいものです。
ここではタイヤの寿命を伸ばすために出来るメンテナンスについてご紹介します。しっかりとメンテナンスをして、安全に、経済的に車を使用しましょう。
乗車前の日常点検
まず何よりも点検が大事です。タイヤが劣化した状態で走っていると偏摩耗を進めるだけではなく、思わぬ大事故につながる可能性があります。点検だけで何か解決するのではありませんが、乗車前に点検をして危険な状態になっていないかを確認するだけでもトラブルを未然に防ぐことができます。
- 異物(釘や石)がついていないか
- パンクしていないか
- 残り溝は適正(3mm以上)か
- 側面(サイドウォール)にヒビ割れや変形はないか
これらの項目を乗車前に点検しておくだけでも、タイヤの急な劣化に気づくことができるでしょう。
もしタイヤの溝が減っている場合、タイヤの位置をローテーションするのがおすすめです。
タイヤを配置換え(ローテーション)する
タイヤは4本同時に同じスピードで摩耗していくことは考えにくいです。多くの車は前にエンジンが乗っているので、車重がかかっている箇所も前に集中しがちです。さらに、いつも一人で運転される方は運転席にしか人が乗らない状況が続くため、右側(左ハンドルの場合は左側)に荷重がかかりやすくなります。
また、フロントタイヤ(前の2本)はハンドル操作によって左右に振るような動作をします。ハンドルを切ったときには、タイヤが地面と設置しながらズリズリと擦れます。走行しながらのハンドル操作であれば摩擦も小さいかもしれませんが、駐車場などで停車しながらの切り返しではグリグリとタイヤを地面に擦り付ける動作になり、消しゴムのようにタイヤが減ります。
このように、車は前後左右で摩耗の仕方が異なります。なので、減り方が均一になるようにタイヤの配置換えをするのがおすすめです。
多くの場合、ローテーションは5,000km走行を目安に行われています。5,000km走行でタイヤが1mmすり減るのが一般的なので、1mm減るごとに場所を入れ替えていけば偏摩耗を防ぎ、タイヤを長く使用できます。
前後の入れ替え
前のタイヤ溝が減っているのであれば前後のタイヤを入れ替えましょう。一般的な車であれば4本のホイールサイズ、タイヤサイズは同じなのでそのまま入れ替えても問題ありません。一部のスポーツカーや、社外ホイールを入れていたりする場合は前後でタイヤサイズが異なるため入れ替えは出来ません。タイヤのゴム自体の交換が必要です。
左右の入れ替え
左右どちらか片側のタイヤが減っているのであれば、左右のタイヤを入れ替えます。しかし、タイヤにはIN/OUTの表記がされているものもあり、そのまま入れ替えると進行方向の向きが逆になってしまう可能性もあります。タイヤ自体の入れ替えはちゃんと車屋さんで見てもらい、問題がないか確認しましょう。
4輪アライメントを実施
車はタイヤ4つが前を向いていればまっすぐ走るように感じるかもしれませんが、見た目にはまっすぐ向いていてもほんの少し曲がっていたりします。タイヤ(ホイール)は多くのアームやショックと呼ばれる部品によって支えられているため、どこかが少し劣化するだけでも傾いてしまうのです。
そこで、アライメントと呼ばれる方法で4つのタイヤの取り付け角度のズレやバランスを修正することが出来ます。ハンドルがまっすぐ向いている時、タイヤ4本がしっかりと前を向いてズレなく走れるようにするものです。
- トー角:車体を上から見た時、タイヤのつま先が車体に対してどのように向いているかを調整します。先が開いた状態をトーアウト、後ろ側が開いた状態をトーイン。
- キャスター角:車体を横から見た時、タイヤの位置が前後どちらに寄っているかを調整します。ハンドルの戻りや、直進安定性を調整できます。
- キャンバー角:車体を前から見た時、タイヤの上下が傾いているかを調整します。前から見てタイヤがハの字になっている状態をネガティブキャンバー、逆ハの字になっている状態をポジティブキャンバーと呼びます。
通常はこの3つの箇所を調整します。それぞれを適正な角度内に調整することによって直進でまっすぐ走ることはもちろん、タイヤに変な負荷がかからなくなるためタイヤの減りも抑えられます。
アライメントは車屋さんに依頼しましょう。事前にアライメントに対応してくれるか電話で確認しておくと確実かもしれませんね。タイヤの組み換えなどを行なっているタイヤ屋さんに直接持ち込んでもアライメントをしてくれる場合はあります。
「ハンドルは真っ直ぐにしてるはずなのに、なんかブレる気がするな。」という人は、一度アライメントを取ってもらいましょう。
停車したままハンドルを切らない
駐車場での切り返しなど、車が完全に停車した状態でハンドルを切る方は多いですね。安全に駐車するために周囲確認をしてゆっくり駐車するのは大事です。しかし、停車したままハンドルを切るのはタイヤを減らす行為にもなるのです。
車が走っている時はタイヤも回転しており、カーブでハンドルを切った時にはタイヤが回転しながら横を向いていくため摩擦も抑えられています。しかし、車が停車した状態でハンドルを切るとタイヤが地面に設置したそのままグリグリと横を向くため、摩擦が大きくゴムを摩耗させます。
車を停車する時も、可能な限り車を前進・後退させながらハンドルを切って移動するように心がけましょう。
急発進、急ブレーキ、急ハンドルを避ける
車の急な動作もタイヤに負担をかける行為です。特に急ハンドルはタイヤを大きく摩耗させる可能性があります。
スピードに乗ったまま急ハンドルを切ると、車の進行方向に対してタイヤの向きがズレてしまいます。そうすると、地面とタイヤの表面の間で大きな摩擦が生じ、タイヤ表面がズリズリと擦れて摩耗します。
また、車が真っ直ぐ向いていたとしても急発進や急ブレーキを行うとタイヤを摩耗させます。車の車重が一気にタイヤにかかるため、タイヤが変形しながら制動し大きな負荷がかかるのです。
そういった急発進、急ブレーキ、急ハンドルなどの車を急に動かす操作は避けましょう。安全第一、安全運転が大切です。
月に一度は空気圧点検
タイヤの摩耗を抑えるためには空気圧を適正に保つことも大事です。タイヤの空気が減っているとタイヤが潰れたようになって、地面とタイヤの設置面積が広くなってしまいます。
通常は空気がパンパンになっているため設置面も少なく、最適な摩擦で走行できるように設計されています。しかしタイヤの空気圧が下がり設置面が広い状態で無理やりタイヤを走らせるようになると、タイヤ自体がヨレて(変形して)しまいタイヤが摩耗するだけでなくパンクの原因になります。
適正空気圧はドア内側や給油口内に記載されている
車の適正空気圧は運転席ドアを開けた後ろ側(ピラー側)にシールで貼られていたり、外車などの場合は給油口の中にシールで貼られています。kPa(キロパスカル)やkgf/cm2の単位で記載されていますが、どちらも表している数値は同じです。空気を入れる空気入れの目盛に合わせて確認しましょう。
タイヤの空気圧を点検、補充するためには必ずしも車屋さんへ行く必要もありません。街のガソリンスタンドや大型カー用品店など整備ピットを備えているようなお店であれば空気入れが置いてあります。
多くの場合はセルフで空気入れを使用できるので、コンプレッサーのアダプター(エアキャリー)から外して車のところまで持って行き、自分でタイヤに空気を入れましょう。この際、手元に表示されている目盛をちゃんと確認して適正空気圧まで空気を入れるようにしましょう。タイヤの空気圧は低過ぎても、高過ぎてもいけません。適性を保つことが重要です。
タイヤの空気圧はタイヤ自体の劣化・摩耗だけではなく、燃費にも影響します。空気圧が低い状態で走り続けると負荷が強くなり燃費を悪化させます。
不安な方はガソリンスタンドやカー用品店のスタッフさんに声をかけて入れてもらいましょう。ちゃんと適正空気圧を確認して空気を入れてもらえるはずです。
タイヤはカバーをかけて日陰に保管
タイヤを長持ちさせるためには保管方法にも気を付けるべきです。雪が降る地域の場合、夏場はラジアルタイヤを、冬場なスタッドレスタイヤを使用するでしょう。逆に、夏場はスタッドレスタイヤを保管していますし、冬場はラジアルタイヤを保管しています。私の住む北陸も雪が多いので、使用していないタイヤは家で保管しています。
保管する時には、ちゃんとタイヤカバーをかけて雨が当たらない日陰に保管しましょう。タイヤはゴムで出来ているため、直射日光が当たったり雨に打たれたりすると劣化してしまいます。また、油類や熱源の近くで保管すると変形の原因にもなります。
また、タイヤは立てて保管するのではなく、可能なら寝かせて保管しておきましょう。立てたままにしておくと、重力によって変形する可能性があります。硬いゴムに見えますが、半年もその形のまま放置されると変形してしまうのです。
車屋さんやタイヤ屋さんが預かりサービスを行なっている場合もあるので、自宅に保管スペースがない場合は近くのお店に問い合わせてみましょう。
タイヤのゴム交換(組み替え)にかかる費用と、タイヤの選び方
※ ここでは、車へのタイヤ取り付け費用ではなく、タイヤのゴムを交換する(組み替える)費用をタイヤ交換費用と呼びます。
タイヤ交換の費用は1台いくらという決まった費用はなく、さまざまな工程ごとに費用が発生します。タイヤ交換にかかる費用として大きくは
- タイヤ交換費用:約1,000円〜/タイヤ1本(バランス調整込)
- タイヤ取り付け費用:約1,000円〜/タイヤ1本
- ゴムバルブ交換:約300円〜/タイヤ1本
- ホイールバランス測定、調整:約1,000円〜/タイヤ1本
といった感じになります。
タイヤ交換にかかる費用の詳細
上記のようにタイヤ交換にはさまざまな項目で費用がかかり、初めての方からすれば「タイヤを交換するだけなのに、なんでこんなに色々と費用がかかるんだろう。」と不思議かもしれません。
しかし、それぞれの項目はタイヤを新しく交換し、安全に走行するために必要なものなのです。
タイヤ交換、取り付け費用
タイヤ交換費用というのは、文字通りタイヤを交換するためにかかる工賃です。
タイヤの組み替えはホイールからゴムを外して付け替える作業になるため、専用のタイヤチェンジャーと呼ばれる機械が必要になります。最近のタイヤチェンジャーは自動でタイヤの脱着をしてくれるものもあるようですが、多くのタイヤチェンジャーは人の手で作業しなければならず、ある程度の経験が必要な作業です。
ゴムバルブ交換
ゴムバルブというのは、タイヤに空気を入れる箇所の部品です。このバルブが付いていることによって空気を入れることが出来ますし、逆に空気が漏れてくるのを防いでくれます。
このバルブもゴムで出来ているため、時間経過とともに劣化します。タイヤのゴムが付いている状態でこのバルブだけ交換することは出来ないため、基本的にはタイヤ交換の際に一緒にバルブも新しく交換します。
バランス測定、調整
タイヤのゴムを新しくする時にはバランス調整という作業が必要です。これは、タイヤが高速で回転した時にちゃんとまっすぐ回転するための調整です。
バランス測定は写真のような機会にホイールを取り付けて行われます。この機会に取り付けたタイヤを高速回転させ、タイヤ全体の重心がずれていないかを測定します。ズレている箇所が分かったら、ホイールにウェイトを貼り付けて全体のバランスを調整します。
バランス調整がされていない場合、タイヤが高速回転した時にグラグラと左右に揺れるように回転します。そのため、タイヤの摩耗が早いだけでなく、ハンドルを真っ直ぐにしているのに車体がふらつくなど危険があります。
このバランス調整を知らない人に取っては余計な作業費のように思えるかもしれませんが、安全に走行するためにもタイヤ交換の際には必須の作業です。
タイヤの選び方
タイヤのゴムはさまざまな種類が販売されており、「これが一番おすすめ」というのは言いにくいのが正直なところ。価格も1本数千円〜数万円とピンキリですし、車の利用用途によっても選ぶべきタイヤは少し異なってくるでしょう。
ここでは、「タイヤを長持ちさせる=費用を節約する」という観点でのタイヤ選びをご紹介します。
回転方向、INSIDE/OUTSIDE表記があるかどうか
タイヤは全部同じように見えますが、いろいろな種類があります。トレッド面のデザインが違ったり、サイドウォールの厚みが違ったりするものもあるのですが、購入の際に注意すべきなのが
- タイヤの回転方向指示(ROTATION)
- INSIDE/OUTSIDE表記
の2つのポイント。これはタイヤを長持ちさせるためのセクションでご紹介した、タイヤの配置換え(ローテーション)が出来るかどうかに繋がります。
タイヤの回転方向指示(ROTATION)
タイヤの側面に「ROTATION」の文字と矢印が書かれているタイヤは回転方向が決められているため、矢印が進行方向を向くように取り付けなければいけません。つまり、車体の左側で使用していたタイヤを右側へローテーションするときには、一度ホイールから外して組み直して右側で使います。
方向性が決まっているタイヤはトレッド面(溝)に摩擦や排水を考慮した溝が掘られているため、進行方向を守った取り付けをしなければ性能が発揮されません。逆方向に取り付けると摩耗を早めたり、スリップの原因になったりします。
INSIDE/OUTSIDE表記
さらに、タイヤには内側と外側が決められているタイプのものがあります。これはタイヤの側面(サイドウォール)を確認すると「INSIDE」や「OUTSIDE」と表記されています。車のタイヤは基本的に内側(車体側)に負荷がかかりやすいため、INSIDE/OUTSIDEの表記があるタイヤは内側が丈夫に作られているケースが多くなります。
内側と外側が決められている場合、タイヤの裏組は出来ません。裏組というのは、ホイールからタイヤを外してそのまま内側と外側を入れ替えて組み直す方法です。タイヤは内側が減りやすいため、裏組すればタイヤが長持ちするのです。
最近のタイヤは回転方向指示が付いていながら、INSIDE/OUTSIDEの表記も付いているためローテーションがしにくいようになってきています。これはタイヤの走行性能を向上させるため、回転方向とトレッド面の作り、車重のかかりやすい場所の補強などが行われているためです。
ROTAION、INSIDE/OUTSIDE表記がないものが長持ち
これはタイヤの性能によるため一概に言えません。しかし、ROTAION、INSIDE/OUTSIDEの表記がされていないものは左右のローテーションが出来ますし、いざとなれば裏組みもできます。
取り付け等の工賃は必要となりますが、ローテーションの自由度があると1つのタイヤを長く使用することが出来ます。ただ、これはタイヤの性能が良いというわけではなく、入れ替えをしながら節約して長く使用できるというだけなので注意が必要です。
低燃費、ロングライフタイプを探す
タイヤはゴム素材やトレッド面の作り、内部のワイヤー形状などによって様々な特徴を持ったものが作られています。その中でも低燃費モデル、ロングライフモデルを選ぶと節約につながるでしょう。
詳細については割愛しますが、低燃費モデル・ロングライフモデルは摩耗しにくいような作りになっているため、雨天時のグリップ力が少し弱い傾向にあります。走りを意識した作りになっていないため、スポーティな走りを期待している方には向かないでしょう。
心配な場合はタイヤ屋さんで相談しながら決める
タイヤは高い買い物ですし、お店で買うよりもインターネットで販売されているタイヤがどうしても安く見えてしまいます。極端に価格だけを追うのであればヤフオク!などのオークションサイト(フリマサイト)で購入するのが一番安いでしょう。
しかし、タイヤは車に乗っている全員の命を乗せているといっても過言ではありません。何も知らずに価格だけで決めてしまうのは危険でしょう。
初めて購入するときは、ちょっと高くなるかもしれませんがタイヤ屋さんや車屋さんで購入して取り付けてもらうのがおすすめです。その後、お勧めされたものと同じタイヤをインターネットなどで購入していくのが良いですね。
タイヤ持ち込みでも交換費用の総額は安くつく傾向にある
多くの車屋さん、タイヤ屋さんではタイヤを購入してもらうことによって利益を上げているため、タイヤを持ち込んで交換だけお願いする場合は交換工賃が高く設定されています。交換工賃が高くなるため、「タイヤの購入も一緒に」と説明されるでしょう。
個人的な経験ですが、タイヤチェンジャーなどタイヤ交換の設備を備えた街の車屋さんであれば、タイヤ持ち込みでもある程度安い費用でタイヤ交換してもらえます。お店でタイヤを購入すると1本15,000円〜だったのですが、同じモデルとヤフオク!で探すと1本10,000円ほどで販売されていました。
仮に4本購入したとなると1本の差額5,000円×4本なので、お店で購入する場合と自分で購入する場合では20,000円の価格差。タイヤを持ち込んだからといって工賃が20,000円以上高くなることは考えにくいため、ヤフオク!などで購入して持ち込んだ方がお得です。
しかし、これは一概に言えませんし、そもそも持ち込みを断っている車屋さんもあるため事前にちゃんと確認しておきましょう。
車に乗る全員の安全のためにも、日々のタイヤ点検と適切な交換を
タイヤのギリギリの寿命は残り溝が1.6mmで、スリップサインが見えたところです。それ以上溝が減るとスリップ事故などの原因となりますし、何より残り溝が1.6mm以下になっているタイヤは整備不良となるため公道を走ることもできません。
残り溝1.6mmは公道を走れる限界の数値。実際には残り溝3mm程度になるとタイヤとしての性能が著しく低下するため交換しておきましょう。製造から10年を経過したタイヤは経年劣化している可能性が高くなるため、通常使用なら4年〜5年を目安に交換するのがおすすめ。
といってタイヤは高い商品です。長持ちさせるためにタイヤをローテーションしたり、組み替えたりして溝を節約することも大事です。何よりも急発進、急ブレーキ、急ハンドルなど急な動作を無くし、安全運転することがタイヤのためにも、運転安全性のためにも大切。
タイヤはどれだけ節約しようと思っても限界がある消耗品。だからこそ、タイヤの買い替え、交換は賢く行いましょう。